「自分だけのオリジナルフィギュアを作ってみたい」「好きなキャラクターを立体化したい」とフィギュア作りに興味を持っても、何から始めればいいのか分からず悩んでいる方は多いのではないでしょうか。フィギュア制作は一見すると非常にハードルが高く、プロの造形師や一部の熟練者だけの趣味のように思われがちですが、必要な道具と正しい手順さえ知っていれば、初心者でも必ず形にすることができます。
本記事では、自作フィギュアの作り方を基礎から徹底的に解説します。アナログ造形とデジタル造形の違いから、初心者におすすめの材料や道具、具体的な制作の6ステップ、さらには顔や髪の毛といった重要パーツを綺麗に仕上げるコツまで網羅しました。
この記事を読み終える頃には、あなたが次に揃えるべき道具や、最初に取り組むべき作業が明確になっているはずです。ぜひ参考にして、奥深いフィギュア造形の世界への第一歩を踏み出してみてください。
フィギュアの作り方は大きく分けて2種類!アナログとデジタル
現代のフィギュア制作において、作り方は大きく「アナログ造形」と「デジタル造形」の2種類に分類されます。それぞれに異なる魅力とメリットがあるため、自分の環境や好みに合わせて選ぶことが大切です。
アナログ造形(粘土・パテ)の特徴とメリット
アナログ造形は、粘土やパテといった物理的な素材を自分の手でこねて、削って形を作っていく伝統的な手法です。スパチュラ(ヘラ)やデザインナイフなど、比較的安価な道具から始められるため、初期費用を抑えたい初心者にとって最もおすすめの選択肢と言えます。
直接手で触れながら立体空間を把握できるため、直感的な造形が可能です。また、削りカスの匂いや素材の手触りなど、モノづくりの実感をダイレクトに味わえる点もアナログならではの大きな魅力です。手先の感覚を頼りに少しずつ理想の形に近づけていく過程は、非常に高い達成感を得られます。
デジタル造形(3Dソフト・3Dプリンター)の特徴とメリット
デジタル造形は、パソコン上の3Dモデリングソフト(ZBrushやBlenderなど)を使用して画面内でデータを作成し、最終的に3Dプリンターで出力して立体化する現代的な手法です。プロの現場でも主流となっている作り方です。
最大のメリットは「何度でもやり直しが効く」という点にあります。アナログでは難しい「左右対称(シンメトリー)の作成」や「パーツの複製」「サイズの拡大・縮小」が、デジタルであればクリック一つで簡単に行えます。ただし、パソコンや3Dプリンター、ソフトの導入など、初期費用が比較的高額になる点や、ソフトの操作を覚える学習コストが必要になる点は留意しておく必要があります。
【アナログ編】フィギュア作りに必要な材料(素材)
アナログ造形でフィギュアを作る場合、まずはベースとなる材料(素材)を選ぶ必要があります。それぞれの素材には硬化時間や削りやすさなどの特性があるため、用途や自分の作風に合ったものを選びましょう。ここでは代表的な4つの材料を紹介します。
初心者におすすめの石粉粘土
石粉粘土(せきふんねんど)は、紙粘土に石の粉を混ぜ合わせたような素材で、初心者からプロまで幅広く愛用されている王道の材料です。代表的な商品に「ファンド」や「ラドール」があります。
水を少し加えることで柔らかくなり、非常に滑らかに造形できるのが特徴です。自然乾燥でカチカチに硬化し、乾燥後は彫刻刀やデザインナイフでサクサクと削ることができます。価格も安価で手に入りやすいため、初めてフィギュアを作る方は、まず石粉粘土からスタートするのが最もおすすめです。
硬化時間が早く強度が高いエポキシパテ
エポキシパテ(通称:エポパテ)は、主剤と硬化剤の2種類の粘土状のパテを練り合わせることで、化学反応を起こして硬化する素材です。タミヤの「エポキシ造形パテ」などが有名です。
石粉粘土と比べて非常に強度が高く、折れやすい細いパーツ(髪の毛の毛先や指先など)の造形に最適です。また、数時間で完全硬化するため、作業スピードを上げたい場合にも重宝します。ただし、硬化後は非常に硬くなるため、削る作業には多少の力と労力が必要になります。
切削性が良く加工しやすいポリパテ
ポリエステルパテ(通称:ポリパテ)は、ペースト状の主剤に液状の硬化剤を混ぜて使用する素材です。車のへこみ修理などにも使われるもので、フィギュア造形用としてはモリモリなどの商品が知られています。
ドロドロとした液状に近い状態で盛り付け、硬化するとプラスチックのような硬さになります。最大の魅力は「サクサク削れる切削性の良さ」です。ヤスリがけが非常にスムーズに行えるため、メカニカルなパーツや、エッジをシャープに立たせたい部分の造形に向いています。ただし、特有の強い有機溶剤の匂いがあるため、換気設備のある環境での作業が必須です。
オーブンで焼くまで固まらないスカルピー
スカルピーは、オーブンで加熱(焼成)するまで絶対に硬化しないという特殊な性質を持つ樹脂粘土です。海外のプロモデラーやクリーチャー造形師に非常に人気のある素材です。
時間が経っても乾燥しないため、自分が納得いくまで何日でも、何週間でも細部を作り込むことができます。スパチュラを使ったシワの表現や、肌の質感など、極めて緻密な造形が可能です。専用のオーブン(温度調節ができるもの)を用意する必要はありますが、造形をじっくり楽しみたい方には最高の素材と言えます。
【アナログ編】フィギュア作りに必要な道具
材料が決まったら、次はそれを加工するための道具を揃えましょう。フィギュア作りは「造形」「表面処理」「塗装」の3つの工程に分かれており、それぞれで使用する道具が異なります。
造形作業に使う道具(スパチュラ・デザインナイフなど)
粘土やパテを盛ったり、削ったりして形を作るために必要な道具です。
- スパチュラ(金属製のヘラ)
- 粘土ベラ(木製・プラスチック製)
- デザインナイフ
- 彫刻刀
- ピンバイス(小型の手回しドリル)
- ニッパー
- ペンチ
特にスパチュラはフィギュア造形の「指の延長」とも言える重要な道具です。先端がスプーン状になっているものや、ナイフ状になっているものなど、形状の異なるものを数本揃えておくと、様々な表現に対応できるようになります。デザインナイフは、乾燥した粘土を削り出したり、不要な部分を切り落としたりする際に必須のアイテムです。
表面処理に使う道具(紙やすり・サーフェイサーなど)
形が出来上がった後、表面をツルツルに磨き上げる工程で使用する道具です。フィギュアの完成度を左右する最も重要な作業に用います。
- 紙やすり(耐水ペーパー)
- スポンジヤスリ
- 金属ヤスリ
- サーフェイサー(下地塗料)
- 持ち手(塗装クリップ)
- マスク(粉塵対策)
ヤスリは目の粗さ(番手)が重要です。400番(粗め)で形を整え、600番、800番、1000番(細かめ)と順番に目を細かくしていくことで、表面の傷を消していきます。サーフェイサーはスプレー状の下地材で、これを吹き付けることで表面の細かな傷が視認しやすくなり、塗料の食いつきも良くなります。
塗装に使う道具(筆・エアブラシ・塗料など)
最後にフィギュアに命を吹き込む、色塗りの工程で使用する道具です。
- 面相筆(極細の筆)
- 平筆
- エアブラシセット(コンプレッサー・ハンドピース)
- 塗料(アクリル・エナメル・ラッカーなど)
- 塗料皿
- 薄め液(溶剤)
- 塗装ブース(換気扇)
初心者のうちは筆塗りから始めるのも良いですが、市販のフィギュアのようなムラのない美しいグラデーション塗装や、滑らかな肌の質感を表現したい場合は、エアブラシの導入を強くおすすめします。塗料は、安全性が高く水で洗える「水性アクリル塗料」が初心者には扱いやすいでしょう。
自作フィギュアの作り方・基本の手順6ステップ
道具と材料が揃ったら、いよいよ実際の制作に入ります。ここでは、アナログ造形における基本的なフィギュアの作り方を、6つのステップに分けて詳細に解説します。
デザイン画(三面図)の作成
いきなり粘土をこね始めるのではなく、まずは設計図となる「デザイン画」を作成します。自分が作りたいキャラクターのポーズや等身、服装のディテールを紙に描き出します。
可能であれば、正面、横、後ろから見た「三面図」を用意するのが理想的です。立体物はあらゆる角度から見られるため、背面のデザインがどうなっているかを事前に決めておかないと、作業途中で手が止まってしまいます。また、作りたいフィギュアの原寸大でイラストを描いておくと、作業中に粘土をイラストの上に重ねてサイズ確認ができるため非常に便利です。
アルミ線などを使った芯材(骨組み)の作成
人間の体と同じように、フィギュアにも骨格が必要です。粘土だけで作ろうとすると、重みで崩れたり、乾燥後に折れてしまったりするため、必ず芯材を作ります。
一般的には、曲げやすいアルミ線や強度の高い真鍮線(しんちゅうせん)をペンチで切り曲げ、デザイン画のポーズに合わせて骨組みを作ります。アルミ線の周りにアルミホイルを巻き付けてマスキングテープで固定し、大まかな肉付けをしておくと、後から使う粘土の節約になり、軽量化や乾燥時間の短縮にも繋がります。
粘土やパテを使った肉付けと大まかな造形
作成した芯材の上から、選んだ材料(石粉粘土やエポキシパテなど)を盛り付けていきます。この段階では、細かなシワや顔の表情などは気にせず、全体のシルエットや筋肉のボリューム感、ポーズの自然さを重視して肉付けを行います。
人間の解剖学や骨格を意識しながら、太もも、ふくらはぎ、腕、胴体など、各パーツのバランスを整えていきます。盛り付けた粘土が乾燥する前にスパチュラで大まかに形を整え、乾燥したらデザインナイフで削って微調整する、という作業を繰り返して理想のプロポーションに近づけていきます。
細部の作り込みとパーツ分割
全体のシルエットが完成したら、顔の造形、服のシワ、装飾品などの細部(ディテール)を作り込んでいきます。ここがフィギュア造形の腕の見せ所であり、最も楽しい工程でもあります。
同時に、塗装を楽にするための「パーツ分割」も行います。フィギュアを一つの塊として作ってしまうと、後から奥まった部分の色を塗るのが非常に困難になります。そのため、頭、胴体、両腕、両脚、髪の毛など、部位ごとにパーツを切り離し、真鍮線などを挿して抜き差しできるように「ダボ(接続部)」を作っておきます。
ヤスリがけとサーフェイサーによる表面処理
造形が完了したら、フィギュアのクオリティを決定づける「表面処理」の工程に入ります。実は、フィギュア制作の中で最も時間がかかり、根気が必要なのがこの作業です。
まずは400番の紙やすりで全体の凹凸を均し、次に600番、800番と目を細かくして表面をツルツルに磨いていきます。ある程度磨けたら、サーフェイサー(グレーの塗料)を吹き付けます。すると、見えていなかった細かな傷や凹みがはっきりと浮かび上がってきます。傷を見つけたら、そこにパテを埋めて再度ヤスリがけを行い、またサーフェイサーを吹く。この「捨てサフ」と呼ばれる確認作業を、表面が完璧に滑らかになるまで何度も繰り返します。
塗料を使った塗装と仕上げ
表面処理が終わり、パーツを中性洗剤で洗って削りカスや皮脂の汚れを落としたら、いよいよ最後の仕上げである「塗装」です。
まずは塗料の食いつきを良くするための下地(プライマーやホワイトサフ)を塗ります。その後、肌色、服の色、髪の毛の色と、明るい色から順番に塗装していきます。エアブラシを使えば、肌の血色を表現するシャドウ(影)や、髪の毛のハイライトなど、美しいグラデーションを表現できます。
塗装が完了したら、デカールや面相筆で「目」を描き込みます。最後に、塗装の剥がれを防ぎ、質感を整えるために「トップコート(つや消しスプレーなど)」を全体に吹き付け、パーツを組み立てれば、あなただけのオリジナルフィギュアの完成です。
フィギュア作りをワンランクアップさせるパーツ別のコツ
フィギュアのクオリティは、特定のパーツの仕上がりによって劇的に変化します。ここでは、特に視線が集まりやすい「顔」「髪の毛」「手」の3つのパーツを美しく作るためのコツを解説します。
命とも言える顔・目の作り方
キャラクターフィギュアにおいて、顔は「命」です。顔の造形が少しでも狂うと、どれだけ体が上手く作れていても違和感が生じてしまいます。
顔を作る際のコツは、「十字線」を引いて目、鼻、口のバランスを常に確認することです。また、目は平面に描くのではなく、眼球の丸みを意識して少しだけ膨らみを持たせたり、逆にアイホールを彫り込んで立体感を出したりすると、より表情が豊かになります。塗装時のアイペイント(目を描く作業)が苦手な場合は、パソコンで目のデータを作成し、市販のデカール用紙に印刷して貼り付ける「自作デカール」の手法を取り入れると、市販品のような美しい瞳を再現できます。
動きを表現する髪の毛の作り方
髪の毛は、フィギュア全体に躍動感や風の動きを演出する重要なパーツです。もったりとした重たい髪の毛になってしまうと、フィギュア全体が野暮ったく見えてしまいます。
髪の毛をシャープに見せるコツは、毛先に向かってエッジ(角)をしっかりと立たせることです。粘土やパテを盛る段階から毛束の重なりを意識し、乾燥後にデザインナイフで裏側から削り込むことで、薄く鋭い毛先を表現できます。また、後頭部から放射状に毛束が流れるように意識すると、自然なつむじと髪の流れを作ることができます。
表情豊かに見せる手・指の作り方
手は「第二の顔」と呼ばれるほど、キャラクターの感情やポーズの説得力を左右するパーツです。しかし、細くて関節が多いため、初心者にとっては非常に難易度が高い部分でもあります。
手を作る際のコツは、いきなり粘土の塊から指を削り出そうとしないことです。まずは手のひらとなるベースを作り、そこに細い真鍮線や極細のアルミ線を5本挿して指の「骨」を作ります。その骨組みに沿って、エポキシパテなどの強度の高い素材を少しずつ肉付けしていくと、折れにくく自然な指の表情を作ることができます。自分の手を鏡で見たり、写真を撮ったりして、関節の曲がり方や筋肉の筋をよく観察することも重要です。
デジタルでフィギュアを作るための必要な機材と手順
近年、フィギュア制作の主流になりつつあるデジタル造形についても、必要な機材と基本的な手順を解説しておきます。パソコンの操作に抵抗がない方は、こちらから入門するのも一つの手です。
デジタル造形に必要なソフト(ZBrush・Blenderなど)
デジタル造形を行うには、パソコンと3Dモデリングソフト、そしてペンタブレットが必要です。
ソフトの代表格は「ZBrush(ズィーブラシ)」です。プロの造形師のほとんどが使用している業界標準ソフトで、まるで本物の粘土をこねるように直感的にスカルプト(彫刻)できるのが特徴です。機能制限版の「ZBrushCore」など、初心者向けの安価なバージョンもあります。
また、完全無料で利用できる「Blender(ブレンダー)」も近年非常に人気が高まっています。無料でありながらZBrushに迫る強力なスカルプト機能を備えており、YouTubeなどにチュートリアル動画が豊富に存在するため、独学で始めやすいのが魅力です。
3Dプリンターでの出力と後処理
パソコン上で3Dデータが完成したら、それを現実の立体物にするために「3Dプリンター」を使用します。フィギュア制作においては、液体のレジン(樹脂)に紫外線を当てて少しずつ硬化させていく「光造形方式」の3Dプリンターが適しています。積層痕(出力時の段差)が目立ちにくく、非常に高精細な出力が可能です。
出力後は、パーツに付着した未硬化のレジンをアルコール(IPAなど)で洗浄し、UVライト(紫外線照射機)に入れて「二次硬化」させる必要があります。その後はアナログ造形と同様に、ヤスリがけによる表面処理と塗装を行って完成させます。
フィギュアの作り方に関するよくある質問
最後に、フィギュア作りを始めようとしている初心者の方からよく寄せられる疑問についてお答えします。
初心者がフィギュアを完成させるまでにどれくらい時間がかかりますか?
作るサイズやディテールの細かさ、作業に充てられる時間にもよりますが、初心者が1/8スケール(約20cm前後)の全身フィギュアをアナログで1体完成させる場合、早くても1ヶ月〜3ヶ月程度はかかると考えておきましょう。特に粘土の乾燥待ち時間や、表面処理(ヤスリがけ)の工程で多くの時間を消費します。焦らず、コツコツと作業を進めることが完成への近道です。
フィギュア作りの初期費用はどれくらいかかりますか?
アナログ造形の場合、必要最低限の材料(石粉粘土、アルミ線など)と道具(スパチュラ、デザインナイフ、紙やすりなど)を揃えるだけなら、3,000円〜5,000円程度でスタートできます。ただし、本格的なエアブラシセットや塗装ブースを揃えるとなると、追加で3万円〜5万円程度の費用がかかります。まずは安価な道具で造形のみを体験し、楽しくなってきたら塗装機材を揃えていくのがおすすめです。
絵が下手でもフィギュアは作れますか?
結論から言うと、絵が下手でもフィギュアは作れます。イラストは2Dの平面に立体を「嘘をついて」描く技術が必要ですが、フィギュアは最初から3Dの立体物を扱うため、空間把握能力さえあれば絵の技術は必須ではありません。実際、プロの造形師の中にも「絵を描くのは苦手」という方は多く存在します。三面図が描けない場合は、既存のフィギュアの写真を参考にしたり、フリーの3Dモデルをアタリ(目安)にしたりすることで十分に代用可能です。
まとめ
本記事では、自作フィギュアの作り方について、アナログとデジタルの違いから、必要な道具、材料、そして具体的な制作の6ステップまで徹底的に解説しました。
フィギュア作りは、決して一部の天才だけができる魔法ではありません。デザイン画を用意し、芯材を作り、粘土を盛り、削り、磨いて、色を塗る。この一つ一つの工程を丁寧に行えば、誰でも必ず自分だけの立体物を完成させることができます。
最初は上手くいかなくて当たり前です。表面がボコボコになってしまったり、顔のバランスが崩れてしまったりすることもあるでしょう。しかし、失敗を繰り返しながら少しずつ理想の形に近づけていく過程こそが、フィギュア造形最大の醍醐味です。
まずは100円ショップで手に入る紙粘土や道具からでも構いません。頭の中で思い描いているキャラクターを、ぜひあなたの手で現実世界に生み出してみてください。

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